田んぼに囲まれた秋田の田舎から一人で東京に飛び出し、厳しい環境に揉まれながらも 「焼肉界のキング」 を目指す一人の青年に迫る。気になるその経緯とは? 思い描く未来と実現までのプロセスを語る。

【プロフィール】
佐々木鳳平(ささきこうへい)
2005年4月26日生まれ。秋田県出身。高校卒業後都内の大手高級焼肉店に就職。入社一年目は有楽町店、現在は銀座店で働く。2025年に社内のワインソムリエの資格獲得。
気になる! 焼肉屋に勤めたきっかけ
――焼肉店に就職しようと思ったきっかけはなんですか?
佐々木鳳平(以下、佐々木):きっかけは父ですね。父は飲食店の経営者で東北に複数軒のお店を持っていて、今は蕎麦、ラーメン、うどん、カツのお店をやっているんです。自分が中学生の頃に父から「どこかの飲食店で経験を積んで経営者になりなさい」って言われて、焼肉の魅力みたいなことを取り憑かれたように語られたんです。その際に「焼肉界のキングになれ!」というフレーズが印象的で、その流れで高校卒業後は焼肉店に就職することになりました。
――今のお店はお父様の紹介で働き始めたのですか?
佐々木:いいえ。まだ秋田にいた頃に、自分で求人サイトから応募しましたね。選んだ理由がサイトに載っていた焼肉の写真がすごく美味しそうだったから(笑)。しかも運が良いことにこの会社が全国焼肉協会のトップが社長を務めるお店だったんです! 上京することはずっと前から決めていて、東京のほうが人も多いしピークタイムの回し方も学べると思ったので選びました。

銀座店の個室。著名人も多数訪れる。会食などでも使われる。
やるなら楽しく! 自分を支えているものとは?
――どんなときにやっていて良かったと感じますか?
佐々木:
お客様が自分の接客を気に入って、再来店してくださったときに嬉しくなりますね。自分はホールを担当しているのですが、焼きサービスでお肉を焼いてあげる際に、お客様とお話しすることがあるんです。自分は積極的に話しかけるのが得意ではないので、しっかり挨拶することと笑顔を一番意識していて、そこを気に入って声をかけいただけたときはとても嬉しいです。また、できるだけ名刺を渡すことを心掛けています。銀座なので様々な業界のトップで活躍している方々がお店に来ることが多く、名刺交換の際に会話のきっかけにもなりますし、認識してもらえればリピーターになってくださることもあるので親しみやすくていねいな接客とともに、人脈作りも大事にしています。そのことが再来店というかたちに繋がると嬉しいですし、頑張ろうと思えます。300枚あった名刺が今は0枚です!実は最近、社内のワインソムリエの資格を取得しまして、それぞれのお肉に合うお酒を提案することにも力を入れています!
――具体的に、嬉しかったときのエピソードがあったら教えてください。
佐々木:7月に会社のトレーニングセンターで通常の業務をしながら、お肉の焼き方や切り方などをよりていねいに教わる期間があり、そのときにお店にリピーターの方が来てくださって、自分宛にコースターにメッセージを書いてくださったことがありました。これは自分の大切な宝物です。また、同期12人の中から新人研修の指導役として選ばれていたときはこれまでにないくらいに嬉しかったです。自分的には飛び抜けたスキルはないと思っていたのですが、店長から毎日挨拶を欠かさずにしていたところと仕事に対する熱意と誠実さを評価したと言われて、思わず涙がこぼれました。

リピーターのお客様からのコースターに書かれているメッセージ。
――反対に、辛かった経験はありますか?
佐々木: お酒を注ぐときにお客様から厳しめの言葉を言われたことがありました。ワインやシャンパンをスムーズに開けるのにはコツがいるので、とにかく回数をこなすのが一番なんです。自分の経験不足のため、最初の頃はよくご指導を受けました。ときには待っている瓶を取られて「もうやらなくて良いから」と言われることもありました。
「焼肉界のキング」になる。それが恩返し
――今の目標はなんですか?
佐々木: 目標は東北に焼肉のお店を5店舗開くことです! 自分の掲げている人生のテーマが「夢は大きく!!」なので最低でも5店舗は開きたいですね。そのためにまずは、入社10年の節目に独立してお店を1店舗出すことを最初の目標にしています。将来は地元で父の事業を引き継ぎたいと思っています。上京して一人暮らしを始めてやっと親のありがたみを知ると同時に、今まで甘え過ぎってしまったと感じています。地元に戻って父の会社を広げることが自分なりの親孝行だと思っています。
この前、ボーナスをもらったときは大きいヨギボーを買ってプレゼントしました。
――将来はどんなお店を作りたいですか?
佐々木: 誰もが行きやすいお店を作りたいです。美味しいお肉をできるだけ抑えた価格で提供できたら良いですね。何より絶対に出したいのは、和牛のお店です。外国産のお肉も美味しいのですが、国産の安心安全で柔らかく美味しいお肉をもっと食べていただきたいです。
あと、焼肉にはやっぱりご飯ですよね! お肉に合うお米も実際に自分で食べ比べてベストなものを選びたいですね。他の料理も同様に実際に食べて、100%自信のあるものを出したいです。そして、最終的には全国一の焼肉店。すなわち「焼肉界のキング」になりたいです!
取材・文・撮影/佐々木結衣





