「もともと小さい頃から、ファッションやヘアアレンジが好きだったので、自然とこっちの道に進むんだろうなと思っていました」
そうにこやかに話してくれるのは、表参道の美容室『trail by ROVER』でアシスタントとして働く齋藤梨奈さん。原宿という美容室の激戦区で働く彼女に、美容師のお仕事の大変な面ややりがいなどをお聞きしました。
優しい笑顔と温かい雰囲気の彼女。trail by ROVERの店内は、白を基調とし、横長の大きな鏡がお洒落で圧倒されそうになりますが、彼女の笑顔が安心させてくれます。
「美容師になるには、美容専門学校へ通うのが大前提です。私は、高校卒業後そのまま専門学校へ入学しました。そこで美容・髪型を中心に、メイクも学びました」
美容師の仕事は、カットやカラーリング、パーマ、縮毛矯正、そしてスタイリングなど多岐にわたります。そのため、技術を専門学校で学ぶそうです。
『trail by ROVER』は、よく雑誌撮影があり、モデルのスタイリングを行います。女性誌の撮影だとメイクもするため、学生時代の授業が大切になってきます。
現在は、スタイリストのアシスタントが主な仕事。美容師として独り立ちするために、今でも練習を重ねています。
「営業時間終了後にウィッグを使ってカットしたり、練習台になってくれるモデルさんを呼んでヘアカラーをしたり、同じ職場の仲間とシャンプーをしたりしています。まずは、たくさん練習することが重要です。苦手なことを重点的にやりつつ、得意なこともたくさん練習して、技術を高めていくという感じです」
『trail by ROVER』は、アシスタントの期間が3年間と決められています。彼女はオーナーから言われた「営業中に髪を切れるようになるまでは下積みが大切」という言葉を胸に日々の練習を頑張っています。
毎日練習に明け暮れる齋藤さんは、美容師として日常的に意識していることはあるのでしょうか。
「美容師としてのSNSアカウントを持っているのですが、自分自身のファッションや好きなスタイルというのは他の人にはない『私』を出せる部分だと思うので、そこをSNSに載せるようにしています。好きな雰囲気や色味、趣味もSNSで発信して、実際にそこから話題が膨らんだお客様もいます」
SNSの活用というのは現代ならではです。齋藤さんは同業者の投稿から、ヘアスタイルはもちろん、載せてある写真の配置なども自身の投稿の参考にしています。特にいいなと思ったものは実際にウィッグでヘアセットしてみることも。お洒落な齋藤さんなら、きっと別の美容室で働く誰かから見本にされているのかもしれません。
「美容師というのはお客様と近い距離で接する仕事なので、おもてなしや言葉使いに一番気を付けています。近い距離で接しているとそのお客様のことをたくさん知ることができて、それが一番のやりがいだし、学べることでもあります。『相手がどう思っているのか』ということがすごくわかるようになりました」
たしかに、美容師さんは細やかな気遣いが上手という印象があります。接客の基礎には、高校生のときに飲食店でアルバイトしていた経験が活かされているそうです。
「現在働き始めて3年目になるのですが、1年目の頃からお店に通ってくれている方が『仕事できるようになったね』『大人っぽくなったね』と私を褒めてくださって。お客様も私たちに寄り添ってくださるのがとても嬉しいです」
齋藤さんの顔がほころびます。美容師は離職率の高い職業ですが、彼女はやめたいと思ったことは“ない”と即答。
「生活リズムが学生の頃と変わるんです。これは美容師ならではだと思うのですが、ご飯を食べる時間がなかったり食べる量が限られていたり、練習で帰る時間が遅くなったり。ただこれは学生時代からわかっていたことではあるんです。想像以上に大変ではありますが、うちはいいお店ですし、美容師をやめたいと考えたことは本当にないです」
自分のやりたい仕事をやり続けられるというのはとても幸せなこと。美容師について楽しそうに語ってくれる彼女に、今後も美容師の道を進んでほしいと願ってやみません。
今は、スタイリストデビューに向け努力を続けている齋藤さん。デビューまでの準備も怠りません。その一つが美容師の大事な仕事道具であるハサミ選びです。
「実は女性の髪を切るときと男性の髪を切るときとで使うハサミも違ってくるので、今はどのハサミが使いやすいのか試行錯誤しながらいろいろと挑戦中です。スタイリストデビューに向けて、自分に合ったハサミを選べたらいいなって思います」
齋藤さんとの会話のうしろで、営業準備を進める音が聞こえます。美容師というのは魔法使いのようで、今日もきっとたくさんの人がここで変身していくことでしょう。彼女はさながら魔法使い見習いといったところでしょうか。4月、trail by ROVERでデビューする齋藤さんの姿を見るのが楽しみです。
取材:片山実紀、関根孝美、佐藤春那、山田梨瑚 |