江戸川区で活躍する皆さんの取り組みを紹介します。
美しい工芸品と将来仕事をするために今何をすべきか
江戸川区南篠崎町にある建屋には、大型の機械や壁一面に立てかけた「かんな」があり、職人の部屋という雰囲気が漂います。伝統工芸「江戸組子建松」の作業場です。組子とは、細かい木のパーツを組み合わせて作る細工のことで、欄間や障子などに使われています。
田中孝弘さんは、初代である父の後を継いで組子細工を作り、技術を守り続けています。その模様はほとんどが江戸時代に考えられたもので、種類は200以上。取材時に製作していた建具は、中心から外側へ春夏秋冬の絵柄「桜・麻の葉・ききょう・雪」が描かれ、その美しさと繊細さに見とれてしまいました。
最近は和室のある家が減り、組子細工の需要は減っています。しかし田中さんは常に「どんなものを作ったらお客さんに使ってもらえるか」を考え、生活に役立つ商品を生み出してきました。組子細工を使ったテーブルや行燈は人気があり、和室だけでなく洋室にも合います。
「江戸組子」と名付けたのは、東京で組子細工を作り続けていることを、たくさんの人に知ってほしいという思いからです。外国人観光客が作業場を訪れることもあるそうで、日本文化を伝える重要な役割を担っています。
田中さんは地域の小中学校で講演をすると、子ども達からよくこんな質問をされます。「将来、仕事をするのに何を勉強したらいいですか?」そしてこう答えるそうです。「そんなものは決まっていない。今やるべきことをやり、好きなことをたくさん見つけて。」と。
好きなことがたくさんあれば、仕事を見つける手立てとなります。いま、目の前にあるやるべきことを一生懸命やり、将来「仕事を選べる人」になってほしいと田中さんはいいます。私たちはこれからも江戸川区の伝統工芸を応援し、技術の素晴らしさを伝えていきます。